『模倣犯』 宮部みゆき

文庫で5巻と言うので、どのくらいかかるかと思ったら一日1冊という非常に健全な(?)ペースで読むことができた。『理由』より読みやすいかも。

ヒロミとカズのエピソードが秀逸。初めは(カズに対しても)嫌な奴であったヒロミの過去・育ちのこと、そして(一見)グズでノロマで、口も立たないカズの説得が、ピースの言葉よりもヒロミを揺さぶり、そして悲劇的な結末へ。姉のヒロミの件があれば許されるというものではないけれど、十分ヒロミに感情移入できたあたりがすごい。

ピースがいかに頭が良く、弁舌巧みでそして演出家(!?)であったとしても、地に足をつけているカズ、有馬のじいさん、増本青年らには通じない。ピースやヒロミは、言わばネットで内政や外交や昨今では皇室のあり方について「こうあるべき」「知らないやつはこうだから」と立派な意見を言っているつもりのお子様、自分のドリームを懸命に繕っている、すなわちちょっと覚めた目で見ると綻びだらけの理論で(模倣だから?)、はいはいいい子ね、わかったわよ(ああアホらし)、ってな連中も十分意識されているのだろう。

だからこそ、最後に対決して網川の正体をあばくのは、恐らくはそういうネットの連中から見たら相当に「イタイ」奴であろう滋子にその役が振られたのかも知れない。
カタルシスを求めるなら、真一くんあたりが自分の葛藤と戦いつつ網川の正体を名指しするなんてのもありだが、そうでないところがこの作家の持ち味なのだろう。ま、有馬のじいさんでは「真似っ子猿」の網川ごときの相手は勿体無さ過ぎではあるが。

ところどころにある「物証」が面白かった。和明の電話相談室の頃はそれほど重要なこととは思っていなかったが、携帯電話やナンパ未遂、綻びが次第に見えてくる。向坂アナ氏は、声紋分析依頼はしないまでも、録画(録音)の聞き比べはしてたりして(^_^;)

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  • 『楽園』 宮部みゆき

    Excerpt: 『模倣犯』以降、あの事件から立ち直れないでいた前畑滋子が、事故で亡くなった子どもに特殊な能力があったという母親の話を聞くことになる。。 Weblog: 気ままな読書日記 racked: 2010-02-18 12:02